モノローグ #5

モノローグ #5 MONOLOGUE

美術館に行くのが好きです。

特に絵を見に行きます。

たとえばゴッホ展やモネ展に行って、気に入った絵を探します。

そしてなるべく絵に顔を近づけます。

筆の走りを見るためです。

筆の走りを見ていると、なんとなく本当にゴッホというひとが生きていたんだ、と感じられる気がするんです。

この一筆を描いたとき、何を考えていたんだろう。
体調はどんなだったんだろう。
直前に食べたものは何だろう。

そんなことを考えながら、顔を近づけます。

たとえば、コンサートを見に行ったとして、ぼくは一番前に座るのが好きです。
なるべく、演奏しているひとが、直(じか)に聴いている音を聴きたいんです。

演奏しているひとが、どんな環境でいるのか知りたい。
どんな気持ちなのか知りたい。

なんだか、絵を見るのと似ています。

もしかしたら作品よりも、作者に興味があるのかもしれません。
そんなことを考えていると、そもそも人間自体が作品のようにも思えてきます。

でも結局は、どう生きたか、ということも作品に現れるでしょうから、同じことですね。
言い換えれば、良い作品のためには、人格を高めることも大事なのかもわかりません。

それでは、人格はどうしたら高められるのでしょうか。
毎日ひとつでも、ひとの役に立つことでしょうか。

正直わかりません。

年齢はそれなりに重ねてきましたが、自分の人格が上がっていっているかどうかは、ぜんぜんわかりません。

あと、このひと人格すごく高い、ってひとにも会ったことがないので、余計わかりません。
もしかして、人格の高低なんてないのでは。

しかし、美術館に行くと、こころが洗われる感覚があるのは確かです。
きっと、自分より高みにいる作者のこころを、垣間見れた "気がする" のが好きなのでしょうね。

気がするだけです。
良くも言えますが、悪く言えば勝手な話です。
こっちがいいように想像しているだけですからね。

まあ世の中、大抵のことは勝手なので、きっとこれでいいんだと思います。

タイトルとURLをコピーしました