この文章では、モダンジャズでは使わない「音の装飾」について書いていきます。
音の装飾とは、トリルやスタッカートなどの表現方法ですね。
気になったひともいるかもしれませんが、単にジャズと言わず、わざと「モダン」とつけています。
モダンジャズで使わない音の装飾
タイトルにも書きましたが、「ビブラート」と「スライド」について書きます。
ビブラート
ジャズは基本的にビブラートはかけません。
かけても音の最後に少しだけ。
対してクラシックはかなりビブラートをかけますね。
歌にしても楽器にしても。
ビブラートもいくつかを使い分けます。
マイルス・デイヴィスはビブラートをかけない練習をした
マイルス・デイヴィスは若いころ、指導者にビブラートをかけないようアドバイスをもらいました。
それまではスイングジャズにありがちな、ビブラートを強くかける演奏のしかただったようです。
そう、「スイングジャズ」はビブラートをかけます。
スイングジャズというのは、ビッグ・バンドでジャズを演奏していた時代です。
一番ジャズが華やかだった時代ですね。
スイングジャズは日本でも流行りました。
バブルの頃、キャバレーで演奏されました。
スイングジャズは、お客さんがダンスをしたりします。
最初に書いたように「モダン」の言葉が重要です。
スイングジャズではビブラートをかけますが、モダンジャズではほとんどビブラートはかけません。
参考にマイルス・デイヴィスのバラードの演奏を載せておきます。
■ Miles Davis - "My Funny Valentine"
ちなみに、上のマイルス・デイヴィスのビブラートの話は「マイルス・デイヴィス自伝」という本に載っています。
エラ・フィッツジェラルドはビブラートかけてるよ?
エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンはジャズを代表するボーカリストと言えます。
彼女たちはビブラートをけっこう強くかけますね。
■ Sarah Vaughan - "The Man I Love"
ただ彼女たちは「スイングジャズ」のボーカリストと言えます。
ビッグ・バンドとの共演をよく聴きますよね。
対して近年のジャズボーカリストはビブラートをほとんどかけません。
たとえば、ダイアナ・クラールなどが参考になります。
■ Diana Krall - "Autumn In New York"
■ Esperanza Spalding - "Body & Soul"
スライド
スライドについてはギターやベースの話です。
ピアノなどにも少し関係します。
アマチュアジャムセッションなどでよく見かけますが、スライドさせて音を当てているひとがいます。
下からスライドさせるわけです。
スライドとは、ある音を弾く際に、その音目がけて指板上をすべらせて弾く弾き方です。
一音下くらいからスライドさせているひとがいますが、ジャズではあまり良しとされない奏法です。
ロックやポップスでは使われますね。
いきなりターゲットの音を弾くようにしましょう。
スライドを使うにしても、半音のスライドをたまに使うくらいにとどめておきます。
スライドはクセになっていることが多いので気をつけてください。
音の装飾は音楽ジャンルを表す
装飾音は深いです。
ビブラートを強くかければクラシックっぽくなるし、三連でひっかければ古いビバップを表現できます。
ベンドを多用すればインドっぽくなりますね。
ジャンルの個性にも通じるし、演奏者の個性にもつながるわけです。
音の装飾は意識して使っていくようにしましょう。